【レビュー】やるべきことがみるみる片づく東大ドクター流やる気と集中力を引き出す技術

すぐ、必ず、効率よくできる人とは?

本書は、医学博士である著者がやることが多すぎて時間がない人に向けて、やる気と集中力を引き出す方法をまとめている本です。現代社会はインターネットなどの情報技術が発達したために情報過多で、やるべきことが多すぎると考えてしまいがちです。情報が多いゆえに、集中力が散漫になってしまう経験をしたことがある方もいらっしゃるでしょう。

本書では、情報が多いことによって起きる脳の混乱を避け、脳をある物事にどのようにして集中させていくかをテーマにして、忙しくて時間がない状況を解決する手段を紹介しています。文章が平易で、イラストなども合間にあり、文字も多くないため、本を普段あまり読まない方には読みやすいかもしれません。

本書の序盤では、タスクを減らすための取り組みを説明し、それ以降は集中力を引き出すため、目標の設定方法や時間の使い方、集中力を下げないための食事の種類ととり方といった具体的な方法を解説しています。

全体的に、自己啓発的な内容であり、どこかで聞いたことがある内容が含まれています。そのため、自己啓発の書籍を読んだことのある方には、少し物足りないかもしれません。ただ、著者は医師であるため、血糖値をコントロールする食事についての解説や加圧トレーニングの紹介を行っていることが最大の特徴だと思います。血糖値の変化が集中力に影響を与えることから、血糖値を急激に上げないような食品、食事のとり方を詳細に書いており、参考になる方もいるかもしれません。本書の終盤では天才と呼ばれる人々と普通の人との違いを論じています。

時間を自分が得意なものへ集中させることの重要性を主張しているものです。1万時間集中してあることに費やすことが天才の要件だとする具体的な数字を挙げての主張は、その賛否はともかく、目標に設定できるほど具体的であり、興味が引かれます。自己啓発の書籍をこれまで読んだことが無い方や集中力について幅広く知りたい、という方に適しているのではないでしょうか。

森田 敏宏 (著)
クロスメディア・パブリッシング(インプレス) (2016/4/8)、出典:出版社HP

はじめに

「やらなきゃ」「よし、やるぞ!」と頭の中で思っていても「なかなかすぐ行動できない」と悩んでいませんか?でも、安心してください。「すぐできない」からといって落ち込む必要はありません。

気持ちをつかさどる脳と行動をつかさどる体のメカニズムを知れば、行動に移すための
スイッチを自在に操れるようになります。
この本を読んで追い込まれないとやらない自分にさよならしましょう。

目次

はじめに
CHAPTER 1
脳の混乱が「やる気」と「集中力」を妨げている
01 便利すぎる世の中があなたの脳を混乱させている
02 ワーキングメモリーの限界を知ろう
03忙しいのに仕事が進まない理由
04 現代人に必要なのは脳の断捨離
05 すぐに取り掛かれないのはどうして?

CHAPTER 2
脳を断舎離するセレクト集中
01 「やることが多すぎる」という思い込み
02 脳の断捨離のカギは脳内の「見える化」
03 ついつい自分の力だけで解決しようとするのは悪い癖
04 プロジェクトをタスクに分解するとまだまだ捨てられる

CHAPTER 3
重要なものを見極めるエッセンシャル集中
01 「やりたくない」には2種類ある
02 重要なものを見極めるマヨネーズの瓶と2杯のコーヒー
03 仕事と向き合う3つの視点
04 目標シートで目標を設定しよう
05目標が見つからないときの「目的の手段化」
06目標をプロジェクト化しよう
07 毎朝の一人戦略会議ですべてがうまく回りはじめる
08 もっとも重要かつ大変なことほど先にこなす
09 結果を出す人の歩き方

CHAPTER 4
やるべきことがみるみる片づくステップ集中
01 脳が「面倒くさい」と感じてしまう2つの要因
02工程が多いと、脳は「難しい」と勘違いしてしまう
03 ご褒美とモチベーションの密接な関係
04 やる気と集中力を引き出すカギは「時間計測」
05 パブロフの犬になれ!
06 心理的時間と物理的時間を統一する
07 なぜ予定通りにいかないのか?
08 従来の時間管理に欠けていたのは「時間密度」
09 「面倒くさい」を時間にするとストレスがなくなる
10 目の前の一歩に集中する

CHAPTER 5
集中状態を長時間つづけるスタミナ集中
01 集中力を高める食事のポイントは血糖値の安定
02 間違った食事がパフォーマンスを下げる
03 集中力を持続しやすい食べ物
04 1日2食でも十分!?
05 現代人は乾いている
06 最適な食事を見極める技術
07 休むことでやる気と集中力が高まる
08 疲れを溜めないぐっすり眠りすっきり起きる方法
09 目覚まし時計に頼らず起きる「自己覚醒」を身につけよう
10 筋肉が脳を活性化する!
11 加圧トレーニングで時間を買う
12 トレーニングの前後にはタンパク質が効果的
13 ジョギングでワーキングメモリーが増える!?
14 無理なく走れるチーランニング
15 走らなくても持久力が上がる加圧ステップ
16 ウォーキングは前傾・つま先着地で

CHAPTER 6
究極の集中を獲得する天才脳の秘密
01 天才とは何か?
02 天才をつくるカギは脳内回路にあった!
03 究極の集中が天才を生む
04 天才になるために必要不可欠なものとは?
おわりに

森田 敏宏 (著)
クロスメディア・パブリッシング(インプレス) (2016/4/8)、出典:出版社HP

 

脳の混乱が「やる気」と「集中力」を妨げている

「面倒くさい」「後でやろう」というようにすぐ行動に移せない人には何が起きているのか? 脳という視点からそのメカニズムを探ります。

01 便利すぎる世の中があなたの脳を混乱させている

「やらなきゃいけないとわかっているのにすぐに取り掛かれない」「やり始めても集中できなくてなかなか進まない」「もっとやる気と集中力がほしい」。
どうしてすぐに取り掛かり、集中して物事に取り組むことができないのでしょうか?
この章では、脳を中心に「やる気」と「集中力」のメカニズムを解き明かしていきます。

●情報過多の時代
やる気と集中力を妨げられる理由の1つに、現代社会に暮らす私たちの脳がとてつもない情報量の波に晒されるようになったことが挙げられます。
その発端は、Windows95が登場して急速に普及したインターネットの存在です。
米IDCという調査会社の2007年の発表によると、2006年の1年間のデジタル情報量は、2006年までに人類が残してきた書物の情報量合計のおよそ300万倍だったそうです。インターネットの普及からわずか10年ほどで、それまで30万年かけて蓄積してきた情報量をはるかに凌駕する情報量がたったの1年で世に出回るようになったのです。

●イヤでも情報が飛び込んでくる
情報は多いに越したことはないと思われがちですが、あまりに多すぎる情報はかえって脳を混乱させてしまいます。
インターネットが登場する以前は、情報に触れる手段といえば、テレビやラジオ、書籍や雑誌といったメディアが主なものでした。
しかし、今では普段私たちが仕事で使っているパソコンや、仕事中もかたわらに置いてある携帯電話・スマートフォンを通じて、いつでも気軽に情報に触れることが可能になりました。
世の中が便利になっているのは間違いありませんが、一方で、私たちの脳は、その便利さが故に混乱状態に陥っているのです。

たとえば、パソコンで何か作業をしているときに、画面にメールが届いたことを告げる通知が表示され、作業を中断してメールをチェックした経験はないでしょうか?
緊急な仕事のメールであればすぐにチェックするのは当然かもしれません。ですが、最近ではFacebookやLineといったSNSの通知も頻繁に届くようになり、パソコンやスマホの画面にそういった通知が届くと、イヤでも視界に入ると思います。

「通知が視界に入ってもほったらかしにしているよ」という人もいると思いますが、実は通知が視界に入っただけでも脳は刺激を受け、作業の効率が落ちる原因になってしまいます。
それは、人間のワーキングメモリーには限界があるからです。

POINT
メールやSNS、スマホなどの便利な通知機能によって脳は混乱状態に陥っている。

02 ワーキングメモリーの限界を知ろう

「ワーキングメモリー」という言葉をご存知でしょうか?
これは日本語では「作業記憶」と訳されています。これと似た言葉で「短期記憶」というものがありますが、ワーキングメモリー(作業記憶)とは若干異なります。
人間の脳には、短時間だけ記憶する「短期記憶」と、長期間に渡って記憶しておく「長期記憶」という機能が別個に存在しています。パソコンに例えると、ハードディスクが「長期記憶」、メモリーが 「短期記憶」と考えるとわかりやすいです。

人間が何か作業をするときは、複数の作業の「段取り」を考え、それを「短期間記憶」し、順番にあるいは並行して作業をこなしていきます。
このように、段取りを考え、記憶し、実行する力がワーキングメモリーなのです。ところが、人間の脳は、この短期記憶が弱いため、脳の中で段取りを記憶しておくのが苦手なのです。
パソコンで同時に複数のソフトを立ち上げたまま作業していると、メモリーをどんどん消費し、動き が遅くなったり、フリーズしてしまったりした経験はありませんか?
人間の脳でもまさしくこれと同じ現象が起きています。

●人間の短期記憶は7つが限界!?
人間は何か作業をするとき、その作業の手順を記憶していますが、そもそも人間の短期記憶は弱いので、一度に覚えられるのは7つほどが限界と言われています。
認知心理学においては「マジカルナンバー」と呼ばれていて、「7+2」、つまり人間が瞬間的に記憶できる情報の数は5~9つが限界とされていますが、最近の説では「4±1」、つまり3~5つが限界という話も出ています。

たとえば、スーパーに買い物に行く前に「あれと、あれと・・・」というように買うものをあらかじめ頭で記憶して出かけるものの、スーパーに着くとお肉の特売やお惣菜のタイムセールを見かけて飛びついてしまう。セール品を見つけて満足顔で家に着いたころ、「あ! あれ買うの忘れた!」という経験はないでしょうか。

あらかじめ買うものを記憶容量いっぱいまで記憶していたところに、さらにセール情報などの新しい情報が入ってきたため、短期記憶の限界を超えてしまい起きた失敗と言えます。
ワーキングメモリーの場合は、単に記憶するだけでなく、それを段取りどおりに実行する能力が要求 されるため、さらにハードルが高くなるのです。

POINT
人間の短期記憶には 限界があるため、一度に多くのことは覚えられない。

03 忙しいのに仕事が進まない理由

ワーキングメモリーはそもそも弱いものと説明しましたが、ワーキングメモリーの限界を超えてしまうと、人間の脳内ではどのようなことが起こるのでしょうか?
人間はワーキングメモリーの限界を超えてしまうと、脳にストレスを感じるようになります。
すると、脳内は言わばプチパニック状態になってしまい、それが集中力を妨げ、作業の効率を著しく下げる原因になってしまいます。もっとパニック状態がひどくなると、どこから手をつけていいのかわ からなくなり、思考停止につながってしまうこともあります。

現代人は忙しく、誰でも複数の仕事を同時進行で抱えているのが普通です。やることが多ければ多いほど、「あれもやらないと、これもやらないと・・・」といろいろと考えてしまい、なかなか効率よく仕事が進まないということはないでしょうか。
忙しくてやることがいっぱいあるのに、思うようにはかどらないのは、まさしくワーキングメモリーの限界を超えているのです。ストレスによって脳内でパニック状態が引き起こされ、作業効率を低下させているのです。 そして、そんなときさらにSNSやメールの通知を目にしたら、パニック状態はひどくなる一方です。
では、どうすれば脳内のパニック状態を回避できるようになるのでしょうか?

POINT
やることが多すぎると、脳はストレスを感じ、作業効率が低下する。

森田 敏宏 (著)
クロスメディア・パブリッシング(インプレス) (2016/4/8)、出典:出版社HP

04 現代人に必要なのは脳の断捨離

「やる気」と「集中力」を引き出す土台となるのは、ワーキングメモリーを正常に保つことです。
そのためには、2つの方法があります。
一つは、ワーキングメモリーを鍛えること。
もう一つは、ワーキングメモリーの負担を減らすことです。

ワーキングメモリーを鍛えるには、詰将棋のような脳の訓練が必要になります。詰将棋をやるのではなく、複数ある仕事の手順を頭の中で考える訓練です。練習すれば詰将棋が上達するように、脳の段取り力も徐々に向上しますが、時間がかかりますし、限界もあります。 そこで、即効性があるのは、脳の負担を減らす方法です。
どうすれば、負担を減らせるか?

ワーキングメモリーの負担を減らすためには、脳の断捨離が必要です。
昨年、近藤麻理恵さんが著した『人生がときめく片づけの魔法』が英語に翻訳され、アメリカでも大ヒットしましたが、その背景には成熟社会でモノが飽和し、部屋を片づけられない人が増えていること が挙げられます。
ただし、これは部屋に限った話ではありません。情報がありすぎる、仕事が多すぎるという現代においては、脳の中も部屋と同じようにちらかっています。

●脳内は見ることができない
部屋であれば、見ればすぐにちらかっていることがわかりますから整理しようと思うかもしれません。ですが、脳内は見ることができないので、ちらかっていたとしても自分自身では気づかないかもしれません。
やることがいっぱいなのに仕事が思うように進まないときには、まず脳内を整理して、ワーキングメモリーが正常に機能するように調整が必要だということを認識しておいてください。

●重要なものを見極める
ちらかっている状態では気づきにくいかもしれませんが、脳内をきちんと整理してみると、重要なものと、そうでもないものがわかるようになります(見ることができない脳内を整理して重要なものを見極める具体的な方法は後の章で詳しく説明します)。
部屋を片づけるときに、一旦いらないものといるものに分けるのと同じように、やるべきことの中か ら本当に重要なものを見極め、ワーキングメモリーをその重要なことに一点集中するために、それ以外 のものを捨てる意識を持つことが大切です。

POINT
ワーキングメモリーが正常に機能するように、脳内の整理が必要。

05 すぐに取り掛かれないのはどうして?

重要なことを見極めたら、あとは目の前のことを片づけていくだけです。1つ片づけたら、さらにまた次を片づける。これの繰り返しが物事を成し遂げる力です。はじめの一歩を踏み出さなければ、どんなことも成し遂げられません。
「そんなことはわかっているけど、その一歩がなかなか踏み出せないから困っているんだ・・・」と聞こえてきそうですね。

では、どうして「目の前の一歩」を踏み出すことができないのでしょうか?要因はいくつかありますが、多くの場合、すぐ行動に移せないのは「不安」「面倒くさい」といった気持ちによって行動が妨げられていることがほとんどです。

「うまくいくかどうか不安・・・」
「どうしたらいいかわからない・・・」
「これは面倒くさそうだ・・・」
「まだ時間があるから後でやればいいか・・・」

こういった気持ちに左右されずに、「目の前の一歩」を踏み出すにはどうすればいいのかは後の章で も詳しく説明しますが、ここで知っておいてほしいことは、気持ちというのはあなた自身が生み出しているものであること、そして、あなた自身が生み出しているものなのだから変えられるということです。
第1章では、主に脳を中心に「やる気」と「集中力」の話をしましたが、次章からは具体的な「やる気」と「集中力」の引き出し方を説明していきます。

POINT
なかなか取りかかれない理由は「面倒くさい」「不安」という気持ちに妨げられているから。

森田 敏宏 (著)
クロスメディア・パブリッシング(インプレス) (2016/4/8)、出典:出版社HP